もっと着物を身近に感じて頂くため、着物の柄の話や、染手法の話や、織物の話を
【紬-tsumugi-】の目線でお話していくコラムです。
初回、何をお話しようか非常に悩みましたが…
今回は【梅】のお話にします。
【東風吹かば におひをこせよ 梅の花 主なしとて 春な忘れそ】
これは全国に12,000か所以上ある天満宮に祀られる、学問の神【菅原道真公】の詠んだ句です。
菅原道真は梅を愛したことで有名で、天満宮の神紋(家でいうところの家紋)でもあります。
菅原道真は濡れ衣を着せられ、大宰府に左遷させられてしまうのですが、
その前に愛していた梅の木を前にして語り掛けるように詠んだと言い伝えられています。
梅は冬の厳しい寒さから春の訪れを感じさせる一つ区切りを感じさせ、
まだ寒い季節の中から花を咲かせることから忍耐や力強さを顕すとされています。
さて、なぜ梅の話を選んだか。
実は私の誕生の記念樹は “梅” なのです。
冬生まれの私は、大阪で生まれ、生後1か月もしないうちに父の転勤で神奈川に引っ越しました。
私が実家にたどり着いた時期には祖父の時代から咲く古い白梅の木があり、見事に咲き誇り、それに感銘を受けた父が、白梅の横に“私の”紅梅の小さな木が植えられました。
濃い紅の花は春を感じさせ、
夏には、猫の額ほどの庭に無理やり置いたであろう子供用のプールではしゃぎまくっている私の後ろに凛と立ち、
秋になると色づいた葉が庭に彩りを与え、
冬には葉も落ちて幹だけが力強く寒さに耐えているな、と
そんな事を考え、一緒に成長した木でした。
よく宿題の作文や詩の題材にも使いました。
一緒に成長している、そんな気がしてたまらない木です。
今は実家も引っ越し、あの紅梅を眺めることはなくなりましたが、
幸運なことに隣の家は親族の家なので、遊びに行くといまだに【久しぶり!】と声を掛けたくなるような、梅の木。
そんな“私の”記念樹 梅 のお話。
着物の梅の柄を見ると惹かれてしまうのはこんなのも理由の一つかもしれませんね。
皆さんにもそんな柄ありませんか…??